はじめに:
ここで説明する要件は、さまざまなコンテンツやワークフローにおける事例に基づいたものですが、各プロジェクトにおいて何が最適かということは、さまざまな要因に左右されます。Netflixにはサポート担当スタッフがおり、こういったワークフローでプロジェクトがスムーズに進行するよう支援しますが、まずはプロダクションに入る前に、基本的な要件とベストプラクティスをしっかり理解しておくことが重要です。質問がある場合は、Netflixのポストプロダクションマネージャーやプロダクションワークフロースペシャリストに連絡してください。
必須要件:
- タイトルとグラフィック (GFX) は最小でUHD (幅3840正方形ピクセル) サイズの描画エリアに収め、仕上げのアスペクト比に合わせてください。
- もしプロダクションの最終的な仕上げフォーマットが幅3840正方形ピクセルを下回る場合は、Netflixのポストプロダクションマネージャーに連絡して仕様を確認してください。
- フレーミングチャートと仕上げアスペクト比は、プロダクションからすべてのベンダーに共有してください。これにより、画像パイプライン全体を通して解像度とフレーミングが一貫し、ピクセル単位の精度を維持できるようになります。
- タイトルとGFXは、以下のファイル形式のいずれかで納品してください。
- 16ビットEXR (.exr)
- EXRは非圧縮もしくは可逆圧縮 (ZIPやPIZ) としてください。
- ログのEXRは受け付けていません。
- 16ビット非圧縮TIFF (.tif)
- 16ビットDPX - フルスクリーン用および非合成素材のみ。
- ProRes 4444は一部のノンフィクションやアニメーションプロジェクトでは受け付け可能です。***
- サイドカーファイルとしてアルファチャンネルやマットを使用する場合、フレーム番号はフィルに対して1:1としてください。
- 必ずカラーパイプラインを設定し、すべてのベンダーに伝達してください。
- 早い段階でタイトルベンダー、編集ベンダー、DIベンダーの間でラウンドトリップテストを実施し、カラーパイプラインが一貫していることを確認してください。
- LUT、CDL、LMTといった作品用ルックが使用される場合、画像パイプライン全体を通じて正確な色再現を実現するため、すべてのベンダーに共有してください。
***リニアACESで作成したタイトルとグラフィックは、16ビットEXR (.exr) とします。
ベストプラクティス:
タイトルセーフとアクションセーフ
- タイトルセーフやアクションセーフに関するベストプラクティスについては、Netflixオリジナル作品マスターQCの仕様を参照してください。
プレートやプルのカラーグレーディング
- プレートやプルのディベイヤー処理は、可能であれば仕上げ担当者が行ってください。
- タイトルやGFX作成に使用される実写プレートは、仕上げのグレーディングにおける他の素材と同じ方法でディベイヤー処理を行ってください。
- 例えば、最終的なカラーグレーディングをACESで行っている場合、タイトルやGFXに使用するプレートもACESにしてください。
- プレートの色調調整が必要な場合はシーンリファードのカラースペース (ACESやカメラLogなど) で行ってください。
納品、アーカイブ、制作終了
- タイトル・GFX担当のベンダーは、イメージコンテナ (TIFFやEXRなど) や圧縮方式 (非圧縮、ZIP、PLZなど) といった最終納品の形式を、仕上げ担当者と確認してください。
- 最終的にレンダリングしたタイトルとGFXには必ず、マットやアルファチャンネルを埋め込むかサイドカーファイルとして付属させ、コンテンツハブ経由でNetflixに納品してください。
- プロジェクトファイルに、テキストなしのすべてのショットと付随するマットを添付して納品してください。
- 仕上げ用の最終納品パッケージに加え、アーカイブ用のGFXツールキットを制作終了までに用意するよう指示されることがあります。これには以下のものが含まれます。
- テキストなしバックプレート
- 編集可能なテキストレイヤー - AEのライブテキストもしくはIllustratorファイル。ラスタライズしないこと。
- グラフィック作成に使用したプラグインのリスト (バージョン情報を含めること)。
- グラフィック作成に使用したフォントのリスト。
- 合成に使用したカラースペースのリスト。
編集
- オフライン編集ベンダーとタイトル・GFXベンダーは、プロキシメディアのフォーマット要件について明確に共有しておいてください。
アナモルフィックキャプチャ
- 仕上げパイプラインがスクイーズ方式または非スクイーズ方式の場合、タイトル・GFXベンダーはDI担当者に合わせてください。
HDR
- Netflixではテキストの輝度に関する仕様は定めていませんが、HDR作品の場合、100~400ニットの範囲に収めるのが一般的です。
- HDRで仕上げ予定の作品を納品する際は、"SDRのグラフィック"はHDRから派生して生成されることが多いため、最終グラフィックの提出前など、早い段階で解析を済ませることが重要です。SDRおよびHDR納品物両方をチェックするため、サンプルフレームのカラーテストおよび合成テストはできる限り早めに実施することをお勧めします。
カラーマネジメント
一般的なタイトル・GFXソフトウェアには、ディスプレイリファードのカラースペースを使い、ICCプロファイル形式でカラーマネジメントをしているものもあり、大抵のソフトウェアではデフォルトでsRGBのカラースペースで作業することになりますが、これは最近のカメラ映像と比べると、どうしても色の情報量が乏しくなります。こういったソフトウェアでは、ACESといったシーンリファードなカラースペースがサポートされるまで、タイトル・GFXは、その作成に使用されたカラースペースによって制限を受けることになります。したがって当面のベストプラクティスは、sRGB等の標準的ICCベースのカラースペースで各要素を作成した後、入力変換または入力LUTを使用して、そのプロジェクトにおける作業用カラースペースに変換することです。一方、OpenColorIOのように、ACES等の最近のカラーパイプラインに組み込めるシステムもあり、こういったプラグインや次善策については調べる価値があります。